過去に作った「自作チューブラヘルツ」の作り方や演奏の思い出について、回想録としてご紹介します。
自宅の片付けをしていると、過去にチューブラヘルツを作ったときのメモが出てきました。懐かしくなってしまって、あの時の思い出をここに残しておきたいと思います。
「チューブラヘルツ」とは何か
「チューブラヘルツ」というものは、一言で言えば「楽器」です。
しかし、一般に広く知られた楽器ではありません。それは、この楽器は「平沢進」氏によって作られた楽器だからです。平沢進ファンの方々であれば氏の自作楽器コレクションのひとつとしておなじみかもしれません。平沢進氏の楽曲「Lotus」のライブステージ演奏の映像でその姿を見ることができます。
チューブラヘルツの外見は一見パイプオルガンの様に見え、パイプが数本並んだ姿をしています。そのパイプを手前に引くことで演奏します。
実際のチューブラヘルツの仕組みは、観客から見えない位置(楽器の下部)にMIDIキーボードが設置されており、パイプを引くことでトリガが直接キーボードの鍵盤を叩く構造の様です。つまり、大掛かりなMIDIコントローラであると言えます。
このチューブラヘルツは、残念なことに近年の平沢進氏のライブで見かけることはありません。専らレーザーハープのみとなっています。
学生時代に自作し、実演奏
学生生活最後の思い出づくり
平沢進ファンであれば必ずや魅力を感じるであろうチューブラヘルツ。自分はチューブラヘルツを演奏したいと切に願いました。
そして、その機会は訪れました。学生時代の学校祭です。
訪れたと言っても、あっちから勝手にやってきたわけではなく、その機会を作るべきアプローチしました。母校では毎年開催される学校祭でバンド演奏なる催しがあり、いわゆる学生バンドが計数十組ステージに立ってキャーキャー黄色い歓声を浴びる機会があります。普通に考えてバンドと言えばギターやベース、ドラムを駆使して演奏するバンドのことで、実際そういったバンドを想定した催しです。自分の学生生活最後の学校祭で思い出づくりのためにとバンド演奏ステージにエントリーしました。(今まで人前でステージ演奏なんてしたことないのに)
その時の様子がこちらの動画です。(Twitterに投稿したものと同様です)
動画にイイネ下さった方には感謝申し上げます。
数年前のことになります。チューブラヘルツを演奏しながら歌っているヒト科が自分で、ウシロにいるのは会(友)人です。Lotusに限らないのですが、平沢進の歌は自分にとってキーが高いために演奏では数キー下げて歌いました。
楽曲の音源は打ち込みです。平沢氏にならってSONARを使いました。
映像で自分の歌を自分で聴くと気恥ずかしいのですが、いい思い出として記憶に残っています。
当時のメモを発見
最近自宅の整理をしているとき、当時チューブラヘルツを作った時のメモが出てきました。とても懐かしいものです。詳しい説明は無く、構想のメモやある程度の設計図です。だいたいのことは作りながら考えていたと思います。
そんなメモを発見して懐かしくなったので、ここに当時の回想録として残しておきたいと思います。
余談:レーザーハープの自作と演奏
ちなみに余談ですが、このときにレーザーハープも作って演奏しました。自分で歌える歌や打ち込みで再現可能な歌を演奏候補として絞っていくとレーザーハープは使い所が難しく、結局のところ「ハルディン・ホテル」を演奏し、そこに登場させました。曲中に流れる効果音として「機関車の汽笛音」を演奏するトリガとして登場してもらいました。
肝心の歌唱のほうは残念ながらうまく歌えず、2度と自分で聴くことは無いでしょう。
チューブラヘルツの作り方
さて、チューブラヘルツの作り方についてご紹介します。当時の記録はあまり残っていませんので、メモと思い出される記憶の範囲のご紹介となります。
MIDIコントローラ:制御部
自作したチューブラヘルツはMIDIコントローラであり、Windows上のSONAR(DAWソフト)と連携して動作します。コアの部分は以前にご紹介した自作レーザーハープと同じです。(プログラムに関連する内容は、この記事では省略します。)
Arduino UNOというマイコンボードをプログラムしてMIDIコントローラとして動作させ、USBケーブルでパソコンに接続し、SONARと連携します。
MIDIコントローラからSONARへは音階のデータを送信しています。「ド」や「レ」といった単純なデータです。SONAR側ではこの音階に対応して音源を鳴らします。そう、パイプオルガンの音源です。
レーザーハープの場合は、トリガが「レーザー光の遮断」であるために外光のノイズが多いと誤動作を起こしやすいです。しかし、チューブラヘルツは単純にスイッチのON/OFFを検知すれば良い為、レーザー光検知よりも扱いが簡単です。
MIDIコントローラ:スイッチ部
スイッチ部はレーザー光よりも扱いが簡単とは言え、別の問題が生じます。それは機械的強度の問題です。
チューブラヘルツはパイプを引いて演奏します。そのパイプの先に何らかのスイッチを付けてパイプを引いたことを検知します。しかし、パイプ自体がテコの様なものであるためにパイプを引くとテコの原理で先端のスイッチに大きな負荷がかかります。このため、小さなプッシュスイッチは使えないと考えました。
そこで取った方法が「アルミ箔でスイッチを作る」ことです。
アルミ箔に電線を付けたものを2つ用意し、パイプの先端と筐体にそれぞれ取り付け、パイプを引いた時に2つのアルミ箔が触れあえばスイッチになると考えました。小学生の夏休みの工作・実験の様です。一番の課題だったスイッチの機械的強度について、3cm四方程度のアルミ箔であれば小さなプッシュスイッチに比べて強度があるだろうと考えて採用することにしました。
このときアルミはハンダゴテで容易くハンダ付けできないということを学びました。
今となれば、機械的スイッチを使わずに磁石とホール素子を使う方式といった別の方法を考えると思います。
パイプ部
パイプの材料については当時色々考えた記憶があります。サイズや強度を考えると塩ビ管がちょうど良さそうでした。しかし、当時は学生であったために予算の都合もあり、塩ビ管の選択肢は却下しました。
メモには塩ビパイプと書かれています。
そして最終的に採用した材料が「ダンボール」です。ダンボールは紙製なのですが、強度がそれなりにあって、加工も容易にできます。そして材料費がかからないのも大きなポイントでした。
ダンボールはダンボール箱を解体して使うわけですが、そのままだと上手く円筒状になりません。そこで、ダンボールの片面の紙を剥ぎます。こうするとダンボールを曲げることができ、円筒を作ることが可能になります。
音階に合わせて長さを別けてパイプを作り、銀色のスプレーで塗装しました。
筐体
チューブラヘルツは筐体の製作が最も手間がかかった記憶があります。
こちらのメモは、方眼紙を使ってチューブラヘルツ全体のサイズやバランスを検討していたものです。
筐体は廃材(木材とアルミパイプ)を使いました。なるべく費用を抑えるためには廃材を有効活用しました。
木材で木枠を作り、そこにアルミパイプを渡し、そのアルミパイプにチューブラヘルツのパイプ(操作部)を並べました。
パイプを手前にひくと音が鳴るわけですが、パイプは手を離すと自分で元の位置に戻ってほしいと考えました。その機構についてはとても単純で、筐体とパイプをゴムつないでゴムの力で元に戻るというものでした。
筐体を横から見た場合のゴムやスイッチの位置を検討しているメモです。
ちなみに、自分の演奏動画ではパイプの長さに対して音の高さの並びが逆になってしまっています。本来は長いパイプを操作したら低い音程が出て、短いパイプを操作したら高い音が出るべきですが、この並びが逆になっているということです。これはミスです。
このミスには原因がありまして、チューブラヘルツの持ち運びのことを考えてパイプと筐体は分割できるようにしていたことが原因のひとつです。分割できる構造だったために、ステージでチューブラヘルツを組み立てた際に並びの方向を間違えて組み立ててしまったというわけです。YouTubeの動画に対してコメントで指摘されて気づきました。
ちゃんとどの位置にどのパイプを取り付けるのかマークをしておくべきでしたね。
以上、チューブラヘルツの作り方の回想録でした。
記録の重要性
ここにご紹介した作り方はメモが残っているもののほぼ記憶が頼りでした。それでも、メモから蘇る記憶は多いものです。あの時の空気も思い出した気がしてとても懐かしくなりました。
やはり記録というのは大切ですね。
チューブラヘルツを作っていた時は学校祭が迫りくる中ギリギリのスケジュールで作業していたこともあって、作りながら考える側面が強くて詳細に検討したり記録をつけたりということはなかなか難しかった記憶があります。
それでも後になってから記録をもっと残しておけば良かったなと、少し後悔しています。なぐり書きでもいいから。
ささいなメモでも色々と思い出されて、さらにそこから次のアイディアにつながっていきそうな気がします。
レーザーハープ製作企画進行中
チューブラヘルツではありませんが、現在レーザーハープ製作の企画を進めています。
以前にもレーザーハープを作ったことがあり、こちらもチューブラヘルツと同時期の学生時代です。この時の製作過程の一部はすでに当ブログで記事にしております。
現在進行中の企画は、YouTubeで動画としてご紹介しています。
以前の記事よりもさらにレベルアップした内容でご紹介したいと思います。
こちらの企画の評判が良い様子なら、改めてチューブラヘルツを作る企画もやってみたいと考えています。
是非、チャンネル登録をお願いします。
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