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真空管のための昇圧DCDCコンバータ実験 with UC3843

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電子工作

真空管を使ったギターエフェクターや小型アンプのための電源としてUC3843による昇圧回路を検討し、その実験を行った記録です。

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小型で、多くの電流を取れる高電圧電源を目指して

以前にDCDCコンバータによって昇圧した200VをB電源に使用した真空管パワーアンプを作りました。

こちらはAmazon等で購入できる昇圧電源モジュールを改造したものになります。この電源では50mA程度出力しています。

参考:DCDCコンバータによる6BM8真空管アンプ

この昇圧電源の制御ICは「UC3843」というものです。古くから知られているICのようで、様々なメーカの互換品が見つかります。

ニキシー管電源の昇圧回路でよく見かけるMC34063やNJM2360に比べて高デューティ比であることや、電流モード制御であることが幸いしてか、12Vからの200V昇圧で数十mAを出力できます。

この度、改造基板ではなく、改めてICのデータシートとにらめっこしながら「小型で、多くの電流を取れる自作電源基板」を作ることを目標に回路検討・実験を行いましたので、ここに記録します。

目標

  • 小型(概ね40mm x 40mm以内,ヒートシンク無し)
  • 出力電流30mA
  • 最小入力電圧8V(9V±10%)

回路図

メーカのデータシートや、前述の昇圧電源基板を参考にしながら回路図をおこしました。

この回路図をもとに、部品を変更して実験を行いました。

部品選定

FET

小型でありながら電流も取れる事を狙うため、基板ではDパッケージのFETを使う事を想定して部品を選定しました。

実験当初は秋月電子にて購入できるものを使い、その後RSにてDパッケージ品を購入しました。

以前の改造電源ではTO-220パッケージ品を使用しました。

インダクタ

インダクタは秋月電子にもSMD品の取り扱いがあるため、こちらを使う事を想定しました。

発振部RC

UC3843はRとCの定数で発振周波数を決定します。

以前の改造元となった電源基板を参考にしながら、購入可能な定数の範囲から発振周波数が約100kHzとなるように選びました。

出力コンデンサ

高耐圧のコンデンサになります。当初セラミックコンデンサを選んでおりましたが、残念なことにコンデンサが鳴いてしまいましたので、電解コンデンサを選定しました。

出力部ダイオード

出力部のダイオードはファストリカバリダイオードになります。このダイオードの逆回復時間が長いと、電源の特性が悪くなります。

実験

今回の実験は、前述の改造基板自ら組んだユニバーサル基板にて行いました。下記の3通りの基板について、各種部品の定数変更を行いながら出力の特性を観察しました。

  1. 改造基板 Ver.1(パワーアンプ使用のものと同等)
  2. 改造基板 Ver.2(UC3843の電源用レギュレータを取り除き、Vinを直接入力)
  3. ユニバーサル基板に実装(上記回路図)

2番の改造について補足します。もともとUC3843の電源(Vcc)はVinからレギュレータによって降圧されたものが供給されているため、Vinが10V程度ないと昇圧動作が開始されません。このため、Vinが9V付近から昇圧されるように、Vinを直接入力する様に改造しました。

実験の結果は、

  • Vin : 入力電圧
  • Vcc : UC3843のVcc供給電圧
  • Vout : 出力電圧

として条件を記載し、結果については発振周波数別に、

負荷(発振周波数設定値[kHz])

  • 負荷抵抗値[kΩ] : 出力電圧測定値[V] -> 出力電流[mA]

といった形で記載しています。

1.改造基板 Ver.1

UC3843のVccにはVinがレギュレータによって降圧された電圧が供給されています。

[1]Vin : 10V入力

  • Vin : 9.98V
  • Vcc : 8.53V
  • Vout : 200V

[1-1]負荷(発振周波数 : 95kHz)

  • 16.5kΩ : 200V -> 12.12mA
  • 13.2kΩ : 191V -> 14.46mA

[2]Vin : 12V入力

  • Vin : 12.0V
  • Vcc : 10.15V
  • Vout : 200V

[2-1]負荷(発振周波数 : 95kHz)

  • 16.5kΩ : 200V -> 12.12mA
  • 13.2kΩ : 200V -> 15.15mA
  • 9.9kΩ : 199V -> 20.10mA
  • 6.6kΩ : 169V -> 25.60mA

2.改造基板 Ver.2

UC3843のVccにはVinがそのまま供給されています。

[1]Vin : 9V入力

  • Vin : 8.9V
  • Vcc : 8.9V
  • Vout : 200V

[1-1]負荷(発振周波数 : 95kHz)

  • 19.8kΩ : 185V -> 9.34mA
  • 16.5kΩ : 180V -> 10.9mA

[2]Vin : 12V入力

  • Vin : 11.8V
  • Vcc : 11.8V
  • Vout : 200V

[2-1]負荷(発振周波数 : 95kHz)

  • 19.8kΩ : 200V -> 10.10mA
  • 16.5kΩ : 200V -> 12.12mA
  • 13.2kΩ : 200V -> 15.15mA
  • 9.9kΩ : 199V -> 20.10mA
  • 6.6kΩ : 160V -> 24.24mA

ユニバーサル基板

[1]Vin : 9V入力

  • Vin : 8.57V
  • Vcc : 8.57V
  • Vout : 200V

[1-1]負荷(発振周波数 : 114kHz)

  • 23.1kΩ : 196V -> 8.48mA
  • 19.8kΩ : 192V -> 9.69mA
  • 16.5kΩ : 183V -> 11.09mA

[1-2]負荷(発振周波数 : 95kHz)

  • 23.1kΩ : 199V -> 8.61mA

[1-3]負荷(発振周波数 : 86kHz)

  • 23.1kΩ : 198V -> 8.57mA (※可聴ノイズ発生)

[2]Vin : 12V入力

  • Vin : 11.8V
  • Vcc : 11.8V
  • Vout : 200V

[2-1]負荷(発振周波数 : 114kHz)

(※可聴ノイズ発生)

  • 23.1kΩ : 199V -> 8.61mA
  • 19.8kΩ : 198V -> 8.57mA
  • 16.5kΩ : 197V -> 11.93mA
  • 13.2kΩ : 194V -> 14.69mA

[2-2]負荷(発振周波数 : 95kHz)

  • 23.1kΩ : 199V -> 8.61mA
  • 19.8kΩ : 198V -> 8.57mA
  • 16.5kΩ : 196V -> 11.87mA
  • 13.2kΩ : 194V -> 14.69mA
  • 9.9kΩ : 189V -> 19.09mA (※可聴ノイズ発生)

実験のまとめ

上記実験結果より、改造基板とユニバーサル基板を比べると改造基板の方が結果が良好でした。これは改造基板の方が配線パターンが短いことが性能に有利に働いたものかと考えています。

また、発振周波数については100kHz付近が良好な結果となりました。

入力電圧(Vin)については、概ね8.5V以上から昇圧が開始されることと、出力の特性から9V入力だと実使用が厳しそうな結果となりました。このため、12V入力での使用が現実的だと考えられます。

今後の電源設計では、この結果を参考に仕様を決定して部品を選定します。

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