DCDCコンバータIC:MC34063を使った降圧コンバータの実験記録です。
MC34063による12V to 3.3VDCDC降圧コンバータ:概要
ニキシー管時計の電源として利用
現在大きなテーマとして「ニキシー管時計の設計,製作」を進めておりますが、そのなかの要素的な技術として降圧電源の検討をしています。
ニキシー管時計の現在の構成としては、ニキシー管用の約200Vと制御マイコン用の3.3V(または5V)程度が必要となります。これら2つの電源は1つの入力電源から生成する構成にしようと考えているところなのですが、その入力電源は現状9V〜12Vとなっています。
入力電圧が9〜12Vである理由は、自分の中で実績のある高圧昇圧電源が最低9〜12V程度からの昇圧電源であるためです。9V以下からの昇圧が成功できていないため、この入力電圧になります。(5Vから昇圧することが目標です。)
マイコンを3.3Vで駆動するときには、入力電圧が5Vであればリニアレギュレータでまかなえそうですが、入力電圧が12Vとなると電圧差が大きいためにレギュレータ内部でのロスが大きいです。よって、より高効率なDCDCコンバータにて12Vから3.3Vまで降圧する電源を検討・実験しました。
電源回路のテーマ
今回実験する電源のテーマが下記になります。
- 部品コストを抑えるため、安価なDCDC-IC:MC34063を使用する。
- 回路の耐久性向上のため、電解コンデンサを使用せずチップセラミックコンデンサを使用する。
設計方式
MC34063の互換品であるNJM2360のアプリケーションノートを参考に、外付け部品の各パラメータなどを計算しました。
計算上は出力コンデンサに電解コンを使用し大きな容量を付けることが必要となりますが、今回はセラコンにて所望の電源が得られるか実験しました。
回路図
評価
可聴域発振ノイズ
発振周波数を高めに設定していますが、無負荷状態で「カチカチカチカチ」といった音が聞こえてきます。負荷を接続すると「キーン」といった高い音が聞こえてきます。これはこのICの間欠発振が可聴域の音として聞こえて来るようです。
発振の原因を調べたところ、コンデンサが振動していました。
発振音が聞こえる場合、主にコンデンサかインダクタから音が生じるようですが、今回はコンデンサが鳴っていました。
参考:なぜ、セラミックコンデンサは音鳴きが発生するのでしょうか? | 村田製作所
ちなにみ、可聴域のノイズが生じていたとしても、コンデンサの信頼性低下には問題は無い様です。
参考:積層セラミックコンデンサの圧電効果によって音が鳴る現象が見られるのですが、このように「鳴いた」まま使い続けた場合、信頼性に影響がありますか?| 村田製作所
発振音がなぜ鳴るか調査及び実験をしました。
大きな原因として考えられることは、出力コンデンサの容量不足でした。
出力コンデンサを10uFのセラコンから330uFの電解コンに変更したところ、音はとても小さくなりました。耳をピッタリ近づけないと聞こえない程です。しかし、聞こえることは聞こえます。
また、インダクタの定数を変えることでノイズに影響があるか実験を行いました。
当初68uHにて大きなノイズが生じていましたが、220uHに変更すると音は小さくなりました。さらに680uHに変更すると音は大きくなりました。
インダクタの定数を変更して実験したところ、多少の違いはあるものの出力コンデンサの容量のほうがノイズに大きく影響する様です。
電圧値
出力コンデンサの定数は出力電圧値にも影響するようでした。
デジタル電圧計にて出力電圧を確認しておりましたが、出力コンデンサが10uFのセラコンだと出力電圧は3.6V程度になりました。
しかし、出力コンデンサが330uFの電解コンだと出力電圧は3.3Vで出力されました。
結論
今回はニキシー管時計のための電源としてMC34063を使うことを考えておりましたが、電解コンレスの回路を目指していることと、可聴ノイズが発せられていることを考えると、使用は断念することとしました。
解決手段
MC34063はPFM制御ICですが、PWM制御であれば安定して発振し可聴域ノイズは生じ難いです。
よって、上位互換のPWM制御IC:NJM2374やその他の制御ICを使用することで可聴域ノイズをなくすことができるものと思います。
実際にNJM2374を使用して実験を行ったところ、発振ノイズは全く聞こえませんでした。
最後に
今回は設計した回路の使用は断念することにしましたが、実験を通してDCDCコンバータの理解が深まりました。
NJM2374が一つ使えそうなICとなりますが、表面実装品の入手性が少々悪い(秋月電子やDigi-Keyには無い)ため、他のICも探して検討してみたいと思います。
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