技術書典 応援祭の新刊のご紹介です。
※この記事を書いている時点で既に「技術書典 応援祭」は終了していますが、記録として掲載します。
技術書典8改め技術書典 応援祭
2020年春に開催予定だった「技術書典8」が新型コロナウイルスの影響で中止となり、イベントはオンライン開催として改め「技術書典 応援祭」となりました。
弊技術書サークル「What’s Up People」は技術書典8に出典予定でしたので、技術書応援祭に出典することとなりました。
技術書典 応援祭 新刊発表
技術書典 応援祭での新刊として
『TANG PriMERで始める FPGA & Verilog入門 ー AI時代の高速,並列計算デバイスへの第一歩 ー』
を出展致しました。
書籍の特徴
本書は最近日本での入手性が良くなった格安FPGAボード「TANG PriMER」を題材に、FPGA開発の代表的HDLである「Verilog HDL」の基本を学ぶ内容です。
FPGAの評価ボードはXilinxやIntelといった大手の評価ボードだと安くても約1万円程度からのものが多いですが、TANG PriMERは2,500円程度の価格と、スイッチサイエンスや秋月電子通商といった販売店で取り扱いがありますので、価格の面で気持ち的にも買いやすく、入手性もいいFPGAボードだと思います。
本書では、TANG PriMERの開発環境の構築から説明し、TANG PriMERを実際に動かしながらVerilogの文法の基礎やFPGA開発の大まかな流れをご紹介する構成となっています。残念ながら、本書を読めばそのまま大規模回路を作れる、という内容にはなっていません。逆に、FPGAを触ってみたいけど何から始めていいかわからないという方向けに「とりあえずFPGAを動かしてどういったものか感覚をつかむ」というところを意識した内容になっています。
TANG PriMERで気軽にFPGAを始めてみませんか。
頒布サイト
技術書典応援祭が終了している現在、BOOTHにて頒布しております。
どうぞよろしくお願い致します。
BOOTH – TANG PriMERで始める FPGA & Verilog入門
まえがき
※書籍のまえがきを掲載します。
最近はAIが大流行しています.
「AI」と一言でまとめてしまうと漠然とした概念の様に感じられますので,AIを支えている技術について少し掘り下げていくと「ディープラーニング」や「機械学習」といったワードが出てきます.
ここでさらに掘り下げてみます.ディープラーニングや機械学習は,コンピュータのリソースを使って多くの計算をさせるため,より早く大量の計算をするためには計算機(ハードウェア)の性能が重要になってきます.
ここで,GPUやFPGA,ASICといったワードが出てきます.
GPUはプロセッサであり,FPGA,ASICはロジックデバイスです.
GPUにせよ,FPGA,ASICにせよ,これらのハードウェアは計算のリソースとして使用されます.
GPUは仮想通貨のマイニングがブームになった時に,計算用途のGPUボードが話題になりました.
秋葉原では中古ボードがたくさん出回っていたようで,後からHDMIコネクタをはんだ付けしてグラフィックボードとして使う話題なんかも見られて楽しそうでした.
GPUはNVIDIAのものが有名で,AI開発のために開発ボードも続々販売されています.
一方,FPGAやASICの方はGPUに比べるとあまり話題が盛り上がっていない様に感じられるかもしれません.
しかしFPGAやASICの方が消費電力や計算速度の面でGPUよりも優れているとされており, 並列処理にも大きな強みがあります.
また,IoTやクラウド技術が進むに連れ,「エッジコンピューティング」という概念も出てきました.
これは大量の計算処理を全てクラウド側で行うのではなく,末端側でも計算処理を行って負荷分散することでクラウド側やネットワークの負荷を減らし,全体としてデータの最適化を行おうとする考え方です.
このエッジコンピューティングにおいて,端末で計算処理を行う役割としてFPGAが注目されています.
この様に注目されることが増えてきたロジックデバイスですが,その入門のハードルが少々高い様に筆者には感じられます.
ASICに至っては個人レベルの範疇を大きく超えています.
このため,個人レベルで扱うロジックデバイスは現実的にはFPGAをターゲットにすることになりますが,電子工作やマイコンの入門として話題に上がるArduinoやRaspberry Piに比べると,その入門のハードルは高いことだと思います.
その理由として,FPGAボードはマイコンボードに比べて価格が高い傾向にあったり,ホビー界隈ではマイコンに比べると人気が無い故に情報が少なく取っ付きづらかったり,様々な理由がハードルになっていると考えています.
特に,FPGAをちょっと試してみたい気持ちで書店に並んでいるFPGAの入門書を手に取ったとしても,そこで紹介されたターゲット評価ボードの価格を見て「おっと…」となり,財布の神様と相談した結果ボードの購入を見送るパターンが多いのではないでしょうか(筆者の想像です).
しかし,最近になってSipeedから小型のFPGAボードが販売されました.それが「TANG PriMER FPGA Dev. Board」です.
価格は2,500円程度と低価格であり,FPGAとボード自体もシンプルな構成で,Arduino UNOの様にボード1つでプログラムの書き込みも行えます.
特に価格の面で入門のターゲットとして嬉しいボードです.
筆者がこのボードを手に入れた当初は日本で取り扱っているお店は少なく,数少ない取扱店であったスイッチサイエンスにて購入しました.
しかし最近になって秋月電子通商にも入荷されたことを確認しましたので,ますます入手しやすくなってきていると思います.
本書では,この「TANG PriMER FPGA Dev. Board」をターゲットに,TANG PriMER固有の開発環境の構築の仕方から,他のFPGAにも使える汎用の開発言語Verilog HDLの基礎についてご紹介したいと思います.
このボードでハードウェア的に不足することが出てきたら,大手メーカーのFPGAボードにステップアップしていくと良いと思います.
その際には,本書でご紹介するVerilogの知識を活かせることと思います.
本書を通して是非FPGAを体験してみてください.
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